3月23日は更新を休みます 2013 3 21
3月23日土曜日は、
メンテナンスのために更新を休みます。
さて、新しい日銀総裁が就任したことで、
金融政策が話題になるでしょう。
そこで、金融政策に関する本を紹介します。
私が読んだ金融政策に関する本は、
数十冊、いや、それ以上かもしませんが、
最も印象に残っている本を掲載します。
それは、2010年9月19日に、このサイトに掲載しました。
経済学入門 2010 9 19
書名 日銀につぶされた日本経済
著者 山本 幸三 ファーストプレス
経済学を勉強する前に、
まず「名目」と「実質」の違いを勉強しましょう。
これがわかっていないと、
いくら高度な理論を身に付けたとしても、砂上の楼閣です。
たとえば、こんなことを考えてみましょう。
日本は、金利が高い。
これに対して、多くの人は、こう言うでしょう。
「そんな馬鹿な。金利はゼロに近い」
確かに、名目金利はゼロに近いと言えますが、
実質金利は、高いのです。
物事を見るときは、
「名目で見ると、どうか。実質で見ると、どうか」という具合に、
常に、二つの視点で、つまり複眼的思考で考える必要があります。
さて、前置きが長くなりましたので、本の紹介に入ります。
この本には、いろいろな論点がありますが、
気になったところを取り上げましょう。
(以下、引用)
「デフレは、税収を減らす」
デフレは、国家に対しても大きな損失をもたらす。
国家運営の元となる税収が、デフレで名目GDPが減少する結果、
大幅に落ち込むからである。
税収は、基本的に企業の名目利益や個人の名目所得など
名目の儲けに税率を掛けて計算されるものなので、
名目GDPの増減に応じて税収も増減する関係にある。
デフレが起きると、この名目GDPがマイナスの物価分だけ減少し、
それに応じて税収も落ち込むのである。
(以上、引用)
最盛期に比べて、税収が大きく落ち込んだと、
あまり言い過ぎると、なんだか国力低下を宣伝しているようなものなので、
「名目税収」だけでなく、「実質税収?」でも発表した方がいいのかなと、
むなしい冗談を言いたくなります。
次の話題に行きましょう。
(以下、引用)
「デフレは国家財政を破綻させる」
デフレで税収が減り続ければ、
当然、国家財政は危機に瀕するわけであるが、
これをもう少し理論的に詰めておこう。
(中略)
結論から言えば、将来的に国債発行による財政赤字が収斂していくか、
それとも拡散し破綻に向かうかどうかを決めるのは、
名目GDP成長率が名目金利(典型的には10年物国債金利)を上回るかどうかである。
(以上、引用)
デフレの弊害については、
たいていは、家計や企業を対象として議論している本が多いのですが、
この本は、国家財政にも焦点を当てているという点で、ユニークだと思います。
かねがね、不思議に思っていたことですが、
あまりにも長引くデフレに対して、
税務当局は、どうして不満の声を上げないのかということです。
もしかして、税務当局は経済学を知らないのかもしれません。
日銀貴族 2010 7 25
書名 伝説の教授に学べ
著者 浜田 宏一 若田部 昌澄 勝間 和代
私は、今年6月20日に他の本の書評で、
世界の常識とは離れて、
日本で独自の進化を遂げた「日銀理論」について言及しました。
こうした「日銀理論」を学ぶには、
岩田規久男氏の著作がよいと書きましたが、
7月8日発売の「伝説の教授に学べ」という本もわかりやすいと思います。
この本は、対談形式を取っていますので、読みやすいと思います。
この対談の中で、若田部昌澄氏は、こう言っています。
「これは金融関係の記者の方から聞いた話ですが、
日本銀行の人たちは、金融機関が健全かどうかまでは想像力が及ぶけれど、
それから先に国民経済があって、
自分たちの政策がそこに影響を及ぼすということは、
なかなか理解できない、と言うのです」
同じく浜田宏一氏も、こう指摘します。
「われわれから見ると、残念ながら日本銀行には、
自分たちの政策が人々の経済状態に影響を与えるという認識が
不足しているように思われます。
日本銀行は、金融システムが機能不全を起こすのは困る、
ということはよく認識しているのでしょう。
彼らは、自分たちの周りにある短資会社や金融機関が安泰であれば、
自分たちは金融システムの守り神として、
きちんと仕事をしていると思い込んでいるのかもしれません」
続いて、若田部昌澄氏は、
「短資会社とは、金融機関同士の短期資金の貸し借りを仲介する業者です。
短資会社の経営陣には、多くの日本銀行出身者がいます」と指摘します。
勝間和代氏は、
「自分たちの仕事を、
金融システムの維持や適正な物価水準の維持といった狭い目的に限定してしまって、
その結果として、若年層などの弱者が、今、陥っている状況について
理解が乏しいように見えます」と言っています。
日本銀行が自分たちの守備範囲を狭く考えてしまっていることについて、
浜田宏一氏は、「自分たちは、これだけしか守らないと決め込んでいると、
エラーが少なくなるわけです。
責められることを少なくするという背景から生まれた発想としか思えません」と分析します。